azamiの趣味 離島生活

きしべのあざみ この頃の趣味

油絵 趣味が違う 芸術はわからない

遺品整理のお宅から、夫が油絵を貰って来ました。私の目の前に25号くらいの額装の油絵を立てかけて褒めて欲しいアピールをして来ます。

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私は山育ちで風景画としてはこの奥入瀬も、南アルプスも見慣れた風景で新鮮さは感じない。50枚ほどあった絵の中で夫が気に入った絵だ。

感性は人それぞれで強要も共有もできないと、伝えました。

 

それを聞くと、悲しそうに元の箱に収めたものだから、ギクリとしました。

『どんな絵が好きなの?』

それは伝えられない。

風景画よりも、動物かなあ、抽象画にも好きな作品はあるし、宗教画でも素敵だなと思う作品もあります。絵は感性の問題だから、人それぞれに心に触れる作品があるよね。奥入瀬も、観てて気持ちが良ければいいんじゃない?

 

『君は?』 

おいらは?

そうだ!

『メガネを掛けてなくて、よく見えなかった。さすがにプロの作品だね、サインもある、細部まで丁寧に描かれた素敵な絵だね』

メガネを掛けて感想を言った。満足したのか、箱に入れて、引っ越しの荷物に入れました。あぶない、あぶない。

 

日本家屋のどこにあんなデカイ絵を飾るスペースがあるのか。きっと自慢するに違いない。だって作家の直筆サイン入りだからね。どんな自慢話になるのだろか、考えたくないなぁ。

 

私の兄弟たちは、皆芸術家を目指していました。奴は長年、我が兄弟の会話に入れずに寂しい思いをしたに違いない。芸術家を目指す兄たちはちょっと陰湿でちょっとプライドが高い。

 

夫は漁師の家に生まれからね、芸術は飯の種にもなんねぇって育ったでしょ。私もね、いや、私はね、芸術なんてわからないからね。

 

兄貴のひとりは木を削って昆虫を上手に作っていた。造形が得意でね、蝉や蜻蛉のブローチを作ってくれた。もうひとりの兄貴はね、絵画が得意で、廻り灯篭を作ってくれた。ゆらゆらと揺れる蝋燭の灯りで廻る竜宮城の絵は、今でも夢に出てくるほどだ。1番下の兄は細密画が得意でね、よく庭に膝をついて虫を追いかけていた。庭には兄貴たちが作った石彫や木彫がゴロゴロ転がっていた。

 

それなりに、素人の域を超えていた。才能と言うのだろうか、それぞれ子供の頃からずば抜けていたと思います。テーブルに置いてあるお札を取ろうと手を延ばすと兄貴が笑いこけていた。細密画のあいつだ。

 

大学を卒業すると、皆方向が変わってしまった。変わらざるを得なかった。生活のために芸術どころじゃなくて、町工場の親父になったり、陶芸を始めたたり、百科事典の挿絵を描いて口に糊を啜っていた。

 

気の毒だけど、芸術で飯は喰ない。すると、感性も荒むしね、私はなぜか文章を書くようになっていた。賞に応募して、上手く受賞したら、アルバイトの何倍も賞金が貰える。なんだろね、やりたいことを目標通りに出来るなんて人なんかいないよね。

 

だから、私は働きながら、文章は書き続けていたんだ。芸術家には分類されない。洋裁も、料理も文章を書くのも、日常の同じラインにあったから、特別な事なんかじゃない。ただ父が兄弟に油絵の道具や彫刻刀をプレゼントしたように、私には蔵書印と書庫の鍵をくれた。

 

芸術に対する評価は人によってまちまちだ。東山魁夷でさえ、絵によって評価は異なります。私なんて、湖に鹿が佇む魁夷の絵を見た時、ハリーポッターの1シーンの絵が目の前に現れたと思ったんだ。だから、好きな絵と言われても、ゴッホやルノワールと答えても底の浅さが見えてしまうでしょ。答えられない。うっかりすれば心まで見透かされそうだもの。

 

芸術家で飯を食べていくのは大変だ。コロナ禍で唯一仕事が出来ているのは、我が夫くらい。

風景画よりも、壮大な海原のパノラマが目の前にあらわれるのに、無理してまで芸術に目を向ける必要もない。

 

私は油絵にも、日本画にも興味はあるけどさ、それほどでもない。生活するのにいっぱいいっぱいだった。親に仕送りの概念は存在しなかった。そんな中でも、退屈すると、美術館に足を運んでいて、洋画から日本画まで、美術館は憩いの場だった。

 

私はね、まあ言ってしまうと、『鳥獣戯画』が好き、漫画だとか、芸術だとかは関係なくて、面白くてたまらない。何時間も観ていられる。東海道五拾三次の版画も好きです。永谷園のおまけの絵も好き。

 

兄たちに聞かれた用の答えとして、美術館に飾られているような有名な作家の絵は答えられるけど、それが知性や知識に分類されないと理解している。兄貴たちはそこで人を判断基準にしているんじゃないかと思う。

 

夫のような自然の中で過ごした目や感性に訴える作品に出会ってみたい。

 

『今日は上野でルーベンス展を観てきたよ』

『宗教画は暗くて疲れない?』

そんなひと言が言えればいいしね。

好きな絵は向こうからアピールしてきます。誰の絵かは忘れてしまうことが多いし。

 

草間彌生さんの絵は明るくて、無邪気で歪み歪みも人臭くて好きですが、敢えてあの俗物の兄弟には言ったこともない。

 

棟方志功さんも好きです。池田満州夫さん。

そんなこんなで、ルノワールよりもゴッホかなとも言えますけど、狭い日本家屋に似合う、置きたい絵は、やはり棟方志功さんかなあ。

玄関横のスペースにさ、あったら毎日挨拶しちゃうけど。

 

夫よ、好きなら奥入瀬も爽やかでいいよね。好きならね。好きなのかしら?

私は鳥獣戯画の屏風が欲しいです。海風が入る縁側に置いても愉快痛快だわ。

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この表紙の絵は、ネットで見かけて、なんとか本人にコンタクトをとり、確か2000円とか、3000円とかで、画像ファイルを譲っていただきました。作者はくのつぎさん、当時玉美の学生さんでした。本名は知らないのです。

 

ひと目惚れで夢に見るほど欲しくなりました。表紙にさせて頂いて、宝物になりました。げーじゅつではない? 阿呆なこと言いなさんな、芸術以外の何物でもない!

 

下段左側二つは日本の妖怪。上二つと右下がくのつぎさんの絵です。

すでにあれから30年以上過ぎていますが、くのつぎさん、立派な芸術家になられているでしょうか。今でも大好きな絵です。

 

この歳まで来ると、人生の終点が見えて来ます。

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