ジップロックの塩をまぶした梅。三日目で梅酢があがり、そろそろ赤紫蘇を入れます。赤紫蘇はスーパーに売ってるかなあ。
夫と、買い物に同行します。すると、「確かこの当たりで見かけた」
岬の方向にゆっくり走りながら、人の家の畑や庭を見ています。
「ほら、あった」
知り合い? 親戚の家?
庭先に赤紫蘇がキレイに植えられています。
夫は、こんにちはと声を掛けて、出て来た人と笑いながら話しています。
なんと、赤紫蘇を抜いて手渡してくれました。
私も焦って車から降りて、何度もお礼を言いましたが、夫は「悪いね、ありがとう、あとその辺のもニ、三本抜いてね」と、さらりと言う。
そうだ、この男、全てがこんな調子で、私には絶対にできない。ありえない交渉を悪びれる様子もなくやってのける。
恥ずかしいやら困るやら。島の畑もね、いくりや琵琶や、柿の木が10本くらい植えてある。ある日、夫が、草取りしていた。どうしたの?
すると、土地の持ち主が県外に引っ越して管理出来ないから、草取りをする代わりに使っていいと許可を貰ったんだと言う。
全てがこの調子で、ある日はボートを貰ったからと言う。たまたまくれた相手と道端で遭遇、オタクの旦那、本当にボート使うの?って聞かれたから、いや、もう老人で危ないので、必要ないと、お断りして、夫に伝えた。
こちらはギリギリセーフ。まだ船で釣りをする気だろうか?
だいたい、大人になって、他人様にそれちょーだいなんて、言えるのだろうか?
島ではそれでいいのだろうか?
兄貴が来て「おまえ、人の畑は勝手に入っちゃいかんぞ」と、注意されていたから島でも当然非常識だよね。
「兄さん、あれ持ち主が使っていいって言ったんだよ」兄貴も唸るしかない。
こんな調子だから、相手も警戒しないのかなあ。おかげで、あちこちからありがたいお裾分けが来ます。私には絶対に無理。1人だったら完全に孤立する。
ありがたい事です。せめて、お礼をしなくちゃと、焦ります。
だから、借りた畑で収穫したら、せっせと調理します。何かお返ししないと、落ち着かない。
夫は何かのついででいいと言うけれど。
しかし届けて、ほっとするとすぐにお返しが来てしまう。
人のお付き合いは難しい。私も田舎育ち、東京の暮らしが長かったけど、生まれて高校を出るまでは田舎にいたのだ。近所はもとより、親戚ともそんなお付き合いをしていた。
母はどうしていたのかなあ。じゃがいもや白菜が段ボールで届いた。お礼はどうしてたのか?思い出せません。昔はきっと自然にそんな文化があって、考え込む必要はなかったのだろう。
夫は今や縄文人か? 弥生人の生まれ代わりか? なんかそんな感覚が自然に身についている。私はハラハラしっぱなしだ。