azamiの趣味 離島生活

きしべのあざみ この頃の趣味

軽い怪談タイトル「ルーツ」

久しぶりに軽い怪談を話してみようかな。

この小さな離島奈留島の人口はわずか1800人。まだ横浜に暮らしていたとき、まったく何事もない日常、その日夫は、鶴見の街で飛び込み営業をしていた。

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会社が新商品を発売するのに、モニターテストに駆り出されたのだ。初めて歩く住宅街の路地で、向こうから同じようにワイシャツ姿の男が歩いてくる、どこかで見たよな、すれ違い際に思い出した。「三次?」「永にいちゃん!」、島の住人、しかも隣人だった。

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立ち話で住所と電話番号のを知らせ合う、懐かしさと、偶然出会った縁に感謝した。2回目は、忘年会の帰り、秋葉原の駅のホームだ。反対側のホームから手を振って、誰かを呼んでいる「俺?えー」。いとこだ、島で兄弟のように育った。慌ててホームの階段を駆け降りて、通路でひとしきり立ち話をした。

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いつ、東京に出て来たのか、今何をしているのか、互いにの情報を伝え会うのが精一杯、30分ほど話し、また電話すると約束した。

あの小さな離島の知り合いに、東京の巨大な街の片隅で出会うことがあるのだろうか?

 

次は杉並区に引っ越したその日、近所のスーパーでまた別のいとこを見かけた気がした、いや、ここは東京だぞ、バッタリ会うなんて偶然がそう何回も起こる訳がない、それでも、店内を足速に歩き回り探した。

 

「光一」「永にいちゃん」、島では、皆名前で呼び合うのだ。光一は三年前からすぐ近くに住んでいるという。やはり住所を交換して別れた。

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10年に一回くらいの間隔だけど、その度に、夫は島の話しを私に聞かせてくれた、そして、それぞれ再会するたびにに、家に招き食事をした。私も彼らと知り合いになった。

 

2回か、3回そんな付き合いをすると「あいつ、もういないよ、島に帰った」と、言う。私は夫からそんな話しを聞き、偶然再会する相手を精一杯もてなした。島の人に、3人知り合いが出来た。

 

そして、私はブログで時々話す相手がいた、なんでも、移住することになったと、移住先が奈留島、彼女が奈留島に移住してからも、半年ほどネットでやり取りしていて、島に来て初めての友人になった。

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そこからの人間関係も、不思議な縁で、細い蔓を伝うように広がってゆく。夫の蔓と、私の蔓は意外に早く絡まり合う。

 

夫帰郷を祝う同窓会を友人が開いてくれた。同窓会なのに、若い女の子が混ざっていた。酒が好きだからと宴席に招いたのだとか。

 

夫と私は島でそれぞれ生活の基盤を作るのに、仕事を初めていた、私のハンドメイドのお店だ。初めてのお得意様が、島で古い屋敷を買って引っ越すから、誰か手伝ってくれないかなあと、言うので飛びついた。

 

古い屋敷の荷物の処分と掃除、夫が引き受けたが、カーテンや台所、テーブルなどのインテリア関係は私が受けて、夫との共同作業になった。

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すると、彼女の紹介で、友人の家の掃除を依頼された、会ってみたら「あー、えー」

ネットで知り会った例の彼女だった。

「あなたたち、知り合いなの?」

もう、かれこれ4年。

「へー、奈留島繋がりだったとは」

 

その日、その家の隣りに新たな隣人が引っ越して来るから、掃除を依頼したいと言う。

 

ちょうど、下見に来ていると言うので挨拶に言ったら、夫と飲んだことがあると笑う。そう、飲み会の彼女だ。また蔓が絡んだ。

「あんたたち、知り合いだったの?」

 

そうして、50年も離れていた島に戻ってきた夫と私の蔓は互に絡まりあい、島の生活に巻き込まれている。本当の親族はなぜか、遠巻きに眺めている。これも不思議だ、なかなか絡んで来ないか、むしろ拒絶している。

 

ナニモノかの力で引き寄せられ、排除されるのか、取り込まれるのかまだわからないが、意思とは別の力によって手繰り寄せられている。

 

それを察知しているかのように身内のf:id:azamibrog:20240907075500p:image

横槍が入る「なぜ、あの家に出入りしてるんだ?」

50年も島から離れていた夫が、今、当然のように忙しく仕事をしていて、すでに地下茎で繋がる中間がいるのは、不思議なのだろう。

 

強力な磁場の中にいることは、確かだ。

妹にしても、東京から来た私が寂しくしていると思いきや、楽しく暮らしているのが、不思議だろう。

 

今この場所の見えざる力に恐怖を感じている。

でも、この地下茎と地上の蔓はもっと多くを巻き込んでいる。

 

今暮らしている家は賃貸。夫の持ち家には妹夫婦が暮らしている、出てゆく気配さえない。困って、住む家を探して欲しいと兄貴に頼んだら、夫の生家を貸してくれた。家主はいとこ。父が遺産相続で渡したらしい。私たちも父から譲り受けたはずだ。何故妹が? しかし、トラブルは避けたい。

 

家主のいとことは、私も面識がある。40年前に長崎に旅行した際に一緒に食事をした。

「あーあの時の彼女」

今は古女房だ。

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紹介した長男は私といとこがすでに知り合いなので、明らかに戸惑っていた。

私は奈留島に移住してきたが、何故か昔からの知り合いがすでに5.6人いて、昔話しにも参加出来るのだ。昔から縁がある島だった。

 

怪談? 私には立派な怪談だ、すでに40年前からこの二次離島に引き寄せられていたんだから、そして、運命とは抗えないものだと感じて身震いしているんだから。

 

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