azamiの趣味 離島生活

きしべのあざみ この頃の趣味

ナチュラリスト おまけエピソード

持病の完治を報告したついでに、人としてあるまじき態度をとる人を上司に持った話しも、しちゃう。

 

若かりし頃、駅ビルの高級婦人服のお店の店員をしていた。そこに、モンペ姿の老女が、泥ネギを抱えて入って来たのです。

 

「こんにちは」私は警戒を解きたくて、笑顔で話し掛けた。

「明後日から旅行に行くけど、洒落た服が欲しい」

老女は白髪混じりの髪を手縫いで包んでいた。指は細く、爪がスクエアカットに整えられていた。きちんと接客をしてみよう。私は次々と、ワンピースやジャケット、ブラウスを見せていった。老女は時には笑顔を見せて、楽しそうにしていました。

 

1時間以上接客した後で、彼女はするりと、帰ってしまった。すると、奥でじっと様子を眺めていた先輩が「あなた、誰でもいいの? 買う客ならともかく、人を見て接客しなさいよ。お店の品位に関わるわ」

 

私は特に反論しなかった。こんな人に何を説明すればいいのだろうか。あの老女の上品な物腰と、知性溢れる会話が分からなかったのか?

 

翌日、スーツをきた中年男性が、彼女にプレゼントしたいと、数着のスーツやら、ワンピースを購入した。あの老女が素敵ねと、目を細めたワンピースが売れてしまった。ちょっと残念に思った。

 

老女はそれからも、時々店に入って来て、話しては返って行った。あるとき、スカートの裾が自分には少し長いと言った。「明日主人が取りに来るから、直しておいて」と言って、帰ってしまった。お会計をしていない。

 

それでも、私はそのワンピースの裾上げを修理に出した。当然、先輩から涙目になるほど叱られた。翌日、スーツの男性が現れ、あれは自分の妻であり、彼女が下見した服を自分が買っているのだと言った。なぜか老女は私にニックネームをつけていたらしく「すーちゃんにはいつもお世話になっているようですね。女房はあんな格好が好きで、飛行機に乗る時にも、裸足に草履姿で待ち合わせに来るから、私が焦ってしまう。この間もTV局に弁当を届けに来て、守衛に止められたんだよ」

 

某テレビ局の重役さんの奥様。「変わり者でね」と、ひとしきり話し、裾上げしたワンピースを見て驚いて、店長にも何度も頭を下げていた。

「彼女は自称ナチュラリストで、髪も染めないし、誤解されやすい。だけど私の服は全部彼女が見立ててるんだよ」

ニューヨークで撮影した写真には、グレーのミデアム丈のワンピースの彼女が写っていた。

それから、10年近く、良いお得意様だった。

 

人を見るとはどう言うことか、私はそれ以来、よくよく注意して接客するようになった。お客様と同じ速度で会話をすることを覚えた。失礼にならない程度の柔らかさで話すことを心掛けるようになった。

 

顧客は増えても、なんか勘違いの先輩がたくさんいて、とても困った。私は店長として、支部長として、上に立つようになったけど、人を見て接客する店員の多いこと、どうにもならないと疲れ果てて退職した。

 

教えることが出来ないのだ。無理に教えようとすると相手の人格さえ傷つけてしまうほど、生き様を否定してしまうほど、遡ってしまうからだ。

 

つまり、他人ごと、人は人、自分は自分。

そうすると、あまり人と関わらない生き方になってしまう。今はそれが楽チンだ。

人を尊重して話すことは、なかなか身につくことではない。

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